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小説 クロスオーバー


☆☆☆小説 クロスオーバー☆☆☆
著作 by 秋野創(ペンネーム)

5章 はじめての教会


 しばらくして、里中となった私は、自分探しをやめることにした。それは、およそ彼の大学生活での立ち位置がわかったことと、所詮里中は里中、中里は中里、真似しようとすると不自然になり、ぎこちなくなり、何より活き活きとした生活ができなくなることに気づいたからだ。里中としての、整合性が壊れない限り自分らしくふるまうことにした。

 それによって、友人から、「少し、前と変わったな」とか、「前よりも、丸くなった気がする」と言われたことがあるが、「気のせいだよ」と笑いとばした。一番気を使うのは、歩深と二人で会う時だった。彼女がとてもいい人で、里中ととても親しい関係にあったことはわかった。周りの友人たちからは恋人同志と認められていたようだ。しかし、中里である自分にはわからない。しかも、歩深はクリスチャンであるという。毎週日曜日には教会の礼拝に出席する敬虔な信者だ。実は里中は彼女に誘われて何度か礼拝に参加したことがあるようで、私が入れ代わった後、一度彼女と一緒に参加したことがあった。

 初めての礼拝でずいぶん戸惑った。イメージではステンドグラスの会堂、黒いガウンを着た神父が迎えてくれるのかと思ってたら、全く違う。駅近くの商店街を抜けて、住宅地に入ろうとしたところに教会はあった。建物に十字架があるので、教会だとわかるが、その十字架が無ければ、倉庫か事務所か何かわからないような建物だった。中は受付とロビーがあり、礼拝堂には正面に十字架がのレリーフのある講壇があって、会議用の椅子がホールに2列に並んでいるだけである。何か新興宗教の集会に来たようで、違和感があった。

 説教は、意外にも、極めて分かりやすかった。詩篇の90:10、人の齢は70、健やかにしても80。どんな人も一人で生まれて、死んで行くときも一人である、という言葉が耳に残った。賛美歌も初めて歌ったが、歌詞はともかく歌いやすく綺麗なメロディーだ。しかし、聖書の話の後に献金があるとしらなかったので、少しあせった。懐がさみしかったし、いくらしていいものかわからなかったからだ。まさか、御賽銭と同じように百円玉を投げるわけにはいくまいと思ってたら、司会者が献金について説明し、クリスチャンでないものは、献金しなくていいことがわかってほっとした。

 教会には、思った以上に若い人もいた。壮年の男性からお年寄りまで、老若男女押し並べているのに驚いた。恐らく若い人や中年の男性はいないだろうと想定していた。礼拝が終わって、歩深が若い人々と話している時、牧師が近寄ってきた。
「よくいらっしゃいました。今日の聖書の話はいかがでしたか?旧約聖書からだったので、少しわかりにくかったでしょう。」
「いいえ、思ったよりよくわかりました。聖書にこんな言葉があるんだな、ってびっくりしました。」と応えると
「そうですか、それは良かった。またぜひいらして下さい。」と言って去って行った。



「これらは、次に来るものの影であって、・・・」
(コロサイ人への手紙 2:17)

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